おもにBLD

スピードキューブ、特に Blindfolded (BLD) の記事を書きます。

4x4x4目隠し競技(4BLD)の「補助輪」となるツールを作りました

こんにちは、酢酸と申します。普段の発信はTwitter (@sak_3x3x3) がメインで、目隠し系競技ばかりやってます。

この記事は Speedcubing Advent Calender 2017 1日目の記事です。

TL; DR

  • 【課題】4x4x4目隠し競技は「分析」「記憶」「実行」の3フェーズで構成されるが、必要な記憶量は3x3x3目隠し競技の2.5倍と言われており、最初から全てのフェーズを完璧に行うことは困難である。そこで、練習時にはフェーズごとに分割して練習するという方法が考えられる。しかし、どのフェーズを練習しようとしても、「分析結果は正しいのか」という問題がつきまとうため、個別のフェーズで練習することは難しい。
  • 【解決】分析結果が正しいかどうかを判定するツールGo aheadを作成した。このツールで分析が正しいことを確認することで、それぞれのフェーズを個別に練習することができるようになり、4x4x4目隠し競技の練習を効率的に行うことができるようになる。

背景

「4x4x4目隠し競技(以下、4BLD)は難しい」。このことは、おそらく4BLDをやったことない人であってもなんとなく共感してもらえると思います。難しさを客観的な数字で示すことは難しいのですが、2017年12月1日現在、4BLDの記録を持っている日本人はたったの28人1であるということから、目隠し系競技の人気のなさを差し引いても、難易度を窺い知ることができると思います。ちなみに、3x3x3目隠し競技の記録を持っている日本人は140人、通常の3x3x3の記録を持っている日本人は1384人です。

4BLDに限らず、一般に目隠し競技は以下の3フェーズで構成されます。

  • 分析 : 初期配置を確認し文字列で表すこと
  • 記憶 : 分析結果の文字列を覚えること
  • 実行 : 実際にキューブを回すこと

4BLDを始めたばかりだと、全てのフェーズを完璧に行うことは困難なので、フェーズごとに練習するという方法が有効であると考えられます。しかし、いずれのフェーズを練習しようとしても、「分析結果は正しいのか」という問題がつきまといます。

  • 分析のみ練習 : 分析をした後、自分の分析結果が正しいことを確かめる必要がある
  • 記憶のみ練習 : そもそも、自分の分析が正しいことが前提
  • 実行のみ練習 : 分析結果を紙に書いてから1つずつ実行すればよいが、そもそも分析が正しい必要がある

このため、現状では、個別のフェーズで練習することは難しく、4BLDのハードルを上げる原因の1つになっています。そこで、今回私は「分析が正しいかどうか」を判定するツールGo aheadを作成しました2。自分の分析に自信が持てないうちはこのツールを補助輪のように利用して分析が正しいことを確認することで、それぞれのフェーズを個別に練習することができるようになり、4x4x4目隠し競技の練習を効率的に行うことができるようになります。そして、練習をするうちに自分の分析に自信が持てるようになったら、補助輪を捨て去りましょう。

使い方

Go aheadにアクセスする

URL: Go ahead

ナンバリングを入力

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スクランブルと分析を入力

f:id:sak_3x3x3:20171126192655p:plain

手順表示

f:id:sak_3x3x3:20171126192817p:plain

ALG.CUBING.NETに移動、手順をコピペして、最後までジャンプ

f:id:sak_3x3x3:20171126191822p:plain

結果:この分析は合っている!

f:id:sak_3x3x3:20171126192224p:plain

技術面

  • 使用した技術は Javascript, HTML, CSSです。
  • 中身は、ユーザの入力に応じて、「ナンバリング」を「あらかじめ設定しておいた手順」に置き換えているだけです。
  • 欠点は以下の2点です。
    • 肝心の判定は自動化できておらず、人が目で判定しなければならないこと。
    • 外部サイトであるALG.CUBING.NETに依存しているため、ALG.CUBING.NETの仕様が変わったり、サイト自体が閉鎖したりしてしまうと"Go ahead"も影響を受けること。
  • githubリポジトリは以下です。contribute歓迎します。

終わりに

本稿では、分析結果が正しいかどうかを判定するツールである"Go ahead"を紹介しました。これにより、それぞれのフェーズを個別に練習することができるようになり、4BLDの練習を効率的に行うことができるようになります。4BLDを始めてみた方、是非とも活用してみてください。なお、付録として4BLDの解法を解説しているページへのリンクを貼っておきました。こちらもご活用ください。

明日の記事は Ryu_Kagamine さんの「横浜大会レポ(とみっくみく配色のその後)」です。

付録

4BLDのやり方を知りたい方は、4BLDへのいざない(1/3)4BLDについてを読んでみましょう。特に、「4BLDへのいざない」の記事は写真をたくさん使って丁寧に解説されているためオススメです。


  1. World Cube Associationの公式サイトのResultsより。

  2. 熟語の意味としては、「先へ進め」で、「あなたの分析は大丈夫だ。このまま行け!」という気持ちが込められています。「判定器」「チェッカー」という語感だと4BLDの成功率の低さも相まってユーザの分析間違いを非難するようなイメージになってしまいますが、そうではなく、自信をつけるきっかけになるような、ポジティブな意味にしたかったのです。