おもにBLD

スピードキューブ、特に Blindfolded (BLD) の記事を書きます。

MBLDを毎日やるためのゴースト対策

初めまして、酢酸ことSakakiです。

この記事は Speedcubing Advent Calendar 2019 の1日目の記事です。

昨日の記事 : 初日なので無し

明日の記事 : RamiJさんのDomino Reduction 入門編

初日からいきなり次の日になるギリギリのタイミングの投稿となってしまい申し訳ありません。

当日の朝の段階であと手直しだけだと思っていても、手直ししていくうちに直したいことが増えて収拾つかなくなる可能性があるので、みなさんも気を付けてください。

予め記事を書き上げて、0:00に投稿されるように予約投稿をセットして寝るくらいがちょうどいいですね。

では、アドベントカレンダーの完走目指して、みなさん頑張っていきましょう!

TL; DR

  • 場所が少ないままMBLDを毎日練習しようとすると、前日の記憶(ゴースト)が残存してしまって邪魔になる
  • 対策として、場所を「横に」増やして交互に使う
  • 上達のために、1日に使う場所をできるだけ増やして負荷をかける

MBLDの練習量を増やすときの課題

どのような競技でも、最低限の知識や手順を身に付けた後には「やればやるだけ伸びる」フェーズ、すなわち、ひたすら回数を繰り返すことで手順や判断を体が覚えていき速くなっていくフェーズが来ます。

通常はやる気と時間があれば伸びが止まるまで練習し続けることができると思うのですが、3x3x3複数目隠し競技 (以下、MBLD) の場合は前日の記憶 (ゴースト) が残存してしまって邪魔になるという問題があり、うまくやらないと他の競技ほど練習量を積むことができないという課題があります。

この記事はゴースト対策を紹介し、やる気と時間のあるMBLDerを後押しすることを目的としています。

なお、MBLDは1試技ちゃんとやろうとするとスクランブルから振り返りまでで90分近くかかってしまう性質上、普通の競技に比べて練習しにくいです。こちらも大きな問題ですが、良い解決法が見つかっていません。どなたか良い方法があったら教えてください。

場所法

MBLDをやる際には大量のイメージを順番通り覚えるために「場所法」というテクニックが用いられます。以下のような様々なサイトで場所法が紹介されています。

しかし、これらの記事では場所の作り方や試技中の使い方については説明されているものの、日々繰り返し練習して場所を育てるという観点や、ゴーストに関する観点がありません。

こちらのサイトでもゴーストの話は無いものの、場所を育てることについては説明されています。内容が豊富で分かりやすく、購入する価値はあると思います。

なお、内容が重なる部分を参考にしてしまうと上記コンテンツの価値を毀損する可能性があるので、あえて見ないようにしてこの記事を書いています。気になる方は購入して読んでみてください。

ゴースト

さて、場所法を使うと記憶が強く残りすぎてしまう場合があります。MBLDで一度使った場所を当日もしくは翌日にもう一度使おうとすると、以下のトラブルが発生することがあります。

  • [記憶フェーズで] 前回のイメージが浮かび上がってきてしまい、今回覚えたいイメージが覚えにくい
  • [実行フェーズで] 今回のイメージではなく前回のイメージが出てきてしまった

この浮かび上がってしまった「前回のイメージ」がゴーストです。ゴーストが出現することは、場所法をうまく使えており強く覚えることができているというポジティブなサインなのですが、毎日練習する上では害にしかなりません。

ではゴーストに対してどう対策すればいいのかというと、ゴーストに出会うことがないように、一度使った場所をもう一度使うまでに時間を空けるしかありません。 他の競技では夜寝たら翌日には同じ場所を再利用できますが、MBLDではゴーストが翌日も出てくる場合があるので丸一日空けることが望ましいです。

一度使った場所を封印している間にもMBLDの練習はしたいので、MBLDを2回できるぶんだけ場所を用意しておけばいいことになります。 ただし、単純に場所 (テーマ) のバリエーションを2倍に増やしてしまうと場所に慣れるまでが大変になってしまうので、使い慣れている場所のチェックポイントを拡張します。詳しくは後ほど説明します。

今まで使っていた (慣れている) 場所を「表」、これから拡張して作る場所を「裏」と呼ぶことにします。次の大会の日付が分かっているなら、その日に得意な「表」を使うと決めて、その前日は「裏」、2日前は「表」…というふうに使う場所を決めると良いでしょう。

「隔日で場所を使うことで前日の記憶が残った状態での練習を回避する」ことや「場所ではなくチェックポイントを増やす」ことは2018年4月にしーなさんに教えていただきました。 https://twitter.com/sssshinaaaa/status/980787932305895424

上記のメインアイデア以外ではしーなさんと異なっている部分が多くあるため、しーなさんのやり方については、ぜひ元ツイートを読んでみてください。しーなさんに確認したところ、1年半以上経過していますが、MBLDのやり方は上記スレッドの内容と変わっていないとのことです。

(ちなみに、メインアイデア自体は受け売りですので、上記のスレッドに関する記事を書くということはしーなさんに確認を取ってあります。)

場所の拡張

この節では、前節で説明した「裏」の場所を用意するためのステップを説明します。

私はshiさんの記事のように、1つのキューブに対して1つの場所の「テーマ」があり、その中に「チェックポイント」を設定しています。 shiさんの記事ではチェックポイントは5個ですが、私は6個にしています。これは、4BLDや5BLDにおいて24文字場所に置く必要が出てくるためです。

これから説明するにあたり、最初から作ってあった場所が下の画像のような状態がだったとします。

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上記の場所の例を見るに当たって、以下の点にご注意ください。

  • 5BLDで使う時にキューブ4つぶんの場所を使うので、場所を用意する時点でそれらをグループにして扱っています
  • MBLDも4個をグループとして覚え、復習もそのグループごとにします
  • 基本的には3, 4, 5, 6のようなグループをまたぐ使い方はしません
  • 分かりやすく色付けしてありますが、実際にエクセルで管理する時には自分に分かれば色分けは必須ではないです
  • 私自身のプライバシーを保護するために「カフェ」などぼかしていますが、実際には慣れ親しんだ実際の店名を入れたほうがイメージしやすいです
  • 例としてホームや改札がたくさん出てきますが、混同しやすいのでおすすめしません

さて、まずはあらかじめ設定してあったキューブごとのテーマに基づいて、まだ使っていないチェックポイントを一筆書きになるように結び、「裏」のカラムに記入していきましょう。それを行ったのが次の図になります。

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これで8個までのMBLDについて、表と裏を毎日交互に使うことができるようになりました。もしMBLDのキューブの個数を増やしたくなったら、次は場所のテーマを増やすことになります。ここからは「表」「裏」が揃っている状態を維持したいので、表裏を両方同時に用意します。

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表と裏でのチェックポイントの選び方については、駅周辺の北側と南側など、表と裏で領域が分かれていたほうが混同を防げる可能性が高いです。また、先に述べた通り、5BLDのことを考えるとキューブ4つぶんの場所はある程度関連性があったほうがよいため、できればキューブ4個ぶんの場所を同時に作ったほうがいいです。

場所作りに関してはブレインスポーツアカデミーの動画 https://www.youtube.com/watch?v=fNoHMYY01gY が詳しいです。 チェックポイントをこの動画内のような細かい粒度で作れるようになれば、チェックポイントにできそうな場所が足りなくて困るということは無くなると思います。

場所の育て方

この節では、作った場所を使って素早く覚えられるようにするための練習方法を紹介します。

場所を辿る練習

設定したチェックポイントを順番に思い浮かべていく練習です。この練習ではいかに高速にチェックポイントを辿ることができるかだけを考えましょう。チェックポイントごとにどのようにストーリーを作るか (場所とイメージを絡めるか) を考えるのは別の練習です。その場所でのストーリーの作り方などは考えずに、ただただ高速にましょう。

私はキューブ4つぶんをまとめて扱うことが多いので、4つの場所を一度に辿るようにしています。目安として、4つの場所を合わせて6~8秒で辿れるようにしましょう。

回数を繰り返して慣れてきているはずなのに遅い場合は、チェックポイントが一筆書きになってないなどの問題がある可能性があります。想起しやすいように脳内での位置関係を改造したり、一筆書きできるチェックポイントに置き換えたりしましょう。

また、用意した場所をいつでも使えるようにスタンバイ状態にするために、「表」の日は「表」の場所全てを、「裏」の日は「裏」の場所全てを1日の間に辿る習慣をつけるとよいです。(欲張って表裏両方辿ってはいけません。ひょっとするとゴーストに遭遇してしまうかもしれません)

場所を辿ることそのものは簡単な作業のように見えますが、軽視せずに繰り返すことが大切です。

例えば大会でMBLDを12個挑戦するとして、1日で12個の場所を辿るのに慣れていないと、1日に12個の場所を使うのに苦労します。

同様に、1日の中で12個の場所を使うのに慣れていないと、MBLDで1日の中の60分間で12個の場所をに使うのに苦労します。

できるだけ1日の中での負荷を増やして、大会に備えましょう。

場所に置く練習

場所に置く練習とは言ってしまえば普通の試技と同じです。最早ゴーストを怖がる必要はないので、MBLDを思う存分楽しみましょう。

場所の辿る練習と同様に、場所に置く練習も普段から負荷をかけることが重要です。その日の場所を使い切るくらいの気持ちで望みましょう。 家での練習だけだと場所を使い切れないという人は、メモリーリーグ Memory League というサイトで通勤通学中に場所を使うのも1つの手です。キューブとは全く関係ないのでこれ以上は説明しませんが、気になったら調べてみてください。

まとめ

以上がゴースト対策です。言ってしまえば、場所を増やして半分に割って、1日で使えるぶんはマックスで使い切ろうというシンプルな話でした。ゴーストに苦しんでいる方がいらっしゃいましたら、この記事と同じ方法を使えとは言いませんが、とにかく場所を増やしてみましょう。

謝辞

素晴らしいテクニックを教えてくださったしーなさんに感謝いたします。

「MBLDは20個までは誰でもできる」と様々な人が言っていますし、謝意を最大限表現すべく2020年はMBLDで20ポイントを目指して頑張ります。

史料保護

Twitterのサービスが止まった時に備えて、以下にスレッドのスクショを撮っておきます。

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